坂道では自転車を降りて
「じゃあ、お願いします。」
軍手を外し、俺に渡す。何故だかとても悔しそうな顔をしていて、俺はショックを受けた。俺、何かまずい事したかな。

「指示、出してくれる?」
 川村と2人で鏡を運んだ。2人ならそう重たくはないが、大きいのと割れ物なので、気を遣う。彼女は足下や設置場所をせっせと片付けた。美波も手伝い始めた。
 あっという間に、鏡は割れる前の定位置に戻った。ただの前室が、稽古場に戻ったような気がした。

4人で鏡のついた稽古場を眺めていると、部室のドアをノックする音が聞こえた。今日は人がやけに沢山くるな。

「廉いる?」
見た事のない女子が立っていた。廉って誰だ?
「あかりちゃん。どうしたの?」
なんだ、川村の彼女か。川村は部室を出て行った。大野さんがこちらを振り向いて言った。

「手伝ってくれてありがとう。やっと、元通りになりました。」
「ああ。」明日からは来ないのか。。
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