「んぁん♡。。。ぁ。」
部室に入るなり、ドキッとする声が聞こえた。続いてガタンと椅子が倒れる音。何が起こったのか部室を見回す。
「うわっ。ごめん。」
今度は男子の声。
見ると、大野多恵が真っ赤な顔をして川村を追いかけていた。右手でグーを作って、川村を叩こうとしている。

「ごめん、ついっ。そんなになると思わなくて、」
二人の追いかけっこを眺めながら、俺は鈴木先輩の方へ移動した。
「何かあったんですか?」
「あれは、川村が悪い。」
「。。。。さっきのって、大野さんの声ですか?」
小声で聞いてみる。
「聞こえたのか?」
あんな声、出るんだ。。普段の落ち着いた話し方からは想像もできない、可愛らしくも官能的な声だった。

大野さんは相変わらず川村を追いかけている。本人は大真面目なのだが、あんなかわいい拳で叩かれたって、大して痛くない。今にも泣きそうな顔で目を潤ませて拳をふりあげる仕草が可愛すぎる。川村も真っ赤になって逃げ回った。
「本当にごめんなさい。すみません。許してください。先輩、神井っ、助けてっ」