坂道では自転車を降りて
「声を落とせよ。中で先輩と大野さんが話してる。」
「それが、何か?」
「何って、。。先輩、告白るんだよ。多分。」
部室へ向かう俺の先回りをして、川村はドアの前に立ち、部室の中の様子に聞き耳を立て始めた。つられて俺も聞き耳を立てる。

「・・・・・。」
先輩の声がする。
「はい。」
彼女の声は明瞭だ。
「一年間、ありがとう。多恵と一緒にできて楽しかった。」
「ありがとうございます。私もいろんなこと教わって、一緒に出来て、楽しかったです。」

「もう少し、・・・・・。」
先輩の声が低くなった。聞き取りづらい。
「先輩?」
怪訝な声の彼女。先輩、何言ったんだろう。
「前にも・・・・。」
「あのとき・・・・みませんでした。」
あの時って、なんだろう。
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