坂道では自転車を降りて
「話は本当は昼なんだろうけど、舞台は夜のイメージで作っても良いかな?」
 彼女は一通り、絵を描いてみてくれていた。舞台装置や脇役に関しては、俺の作り込みの甘さもあり、絵がおおいに役に立ったが、主人公の二人については、すでに完成していた感があり、あまり変更はなさそうだった。

 一通り絵を見せ終わると、彼女は俺を見て笑顔を見せた。
「なんか、舞台が出来上がるのすごく楽しみ。」
「ありがとう。そういってもらえると、俺もすごく安心する。」
「装置のほうもがんばるからね。予算ないけど、いろいろ工夫してみるよ。」
「ありがとう。」

 脚本はすぐに完成したが、その後も、彼女は何枚も絵を描いて、描けた絵を見せてくれた。俺の書いた小説に挿絵が入ったみたいで、なんだか嬉しかった。
 春の公演の成功もあり、部の会議では、あっさり俺の本が文化祭用の舞台の脚本として採用された。誰も他の脚本を持ってこなかったからだ。
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