その日、俺のクラスの前の廊下に大野多恵が立っていた。誰かを探している様子だ。
「誰に用事?」
尋ねると
「あー、田崎くんってどの子?」
背を丸めて内緒話で尋ねる。俺じゃないんだ。ちょっとがっかり。ってか男?

「待ってて。」
田崎を呼びに戻ろうとすると、
「あ、違うの。呼ばないで。」
呼ばないの?なんで?
「用があるんじゃないの?」
「とりあえず、顔を見に来ただけなの。」
口に人差し指をあてて、口止めのポーズをする。顔見に来ただけ?顔を知らないやつの顔を確認しに来たって事か。

彼女と並んで、ドアの影からこそこそと教室を覗き込む。
「あの真ん中の席で、話してる3人いるだろ。右のこっち向いて座ってるやつ。」
彼女は熱心に彼の顔を眺めた。
「ふーん。見た事ないな。彼、どんな人?」
「どんなって、言われても。俺もそんなには知らないけど、、ひと言で言えば、ギーク。何が知りたいの?」
田崎は確か数学部だ。面白そうなやつではある。