「ごめん、それは分かんない」
心晴は即答し、愛菜も困ったように笑っている。
「でも、どうしてプリンなの? 作るの?」
「作ってほしい、って言われたんだけど……」
千紘と会ってから、もうすぐ1週間が経とうとしている。明後日には土曜日。
(ホントに来るのかしら?)
来ない確率の方が高いと分かってはいるのだが、こうしてプリンの作り方を思い返している自分。
これはなんと言うか……。
「滑稽だわ。……何? どうかしたの?」
心晴がニヤニヤとこちらを見てくるので、ちょっとイラっとした。
「誰に言われたの? 男? 男か?」
「……まぁ、男、よね」
「ホント!? どんな感じの人? 年上?」
愛菜も食いついてきて、千世は若干、驚いてびくつく。
「と、年下だけど……」
「年下? ダメダメ、年上じゃないと。あんたには、大人の包容力がある人じゃないと」
「そんなことないよ。年下でも、しっかりした子多いもん」
「…………」
その瞬間、千世は気づいた。
こいつら、何か勘違いしてるな、と。
けど、面白そうなので放置することにしよう。
「で、実際はどんな人?」
「……生意気」
どこで聞いたのか忘れたが、嘘をつく時は少しだけ本当のことを混ぜるといいと言う。
けどそもそも、自分は嘘をついているわけじゃない。本当のことを、あえて言わないだけだ。