最強甘々計画

計画その二 有名お菓子を食べよう



 翌日の月曜日。通常勤務がまた始まった。


 社内広報担当の私は、自分のデスクで新商品の情報をひたすらまとめる。


 ふと、デスクに置いたままの、数日前にドラッグストアで買っておいた袋いりのキャラメルが目についた。


 甘味に馴染むため、勤務中の合間にこれを習慣的に摂取する算段だったけど、今日はやめておこう。(といってもまだ、一粒も食べていないけど)


 今日のお昼は、塩河さんとお菓子を食べる。甘いものを食べるのは、その時だ。


 正午を回れば、塩河さんと会える――そう思うだけでなぜか、パソコンのキーボードを打つ私の指が弾む。


「ままれん、行くよー!」


 昼休みまで後一時間半のところで、ミーティングのため会議室に移動することになり、同期で同い年の比井奈津(ひいなつ)が、部の扉近くで私を呼ぶ。


 会議室のある四階まで、エレベーターを利用して向かう時だった。上階から下りてきたエレベーターにはちょうど塩河さんが乗っていて、同じ部門らしき社員と同時に降りてくる。


「ままれちゃ……北東さん、おはよう」


 塩河さんもこちらに気づいた。外では下の名前で呼ぶけど、職場では名字。ちょっとした違いが二人だけの秘密みたいで、どきりとする。


「また後でね!」


 塩河さんが去り際、私の耳元の近く、小声で言ってきた。


「えーっ。今のって、企画部の塩河副部長だよね? ままれん、いつから顔見知りなのー?」


 一緒にいる奈津が、すかさず指摘を入れてくる。


「塩河副部長、年も三十近いのに、そう見えないくらい童顔なのがまたいいよねー!」


 奈津には大学時代から付き合っているという恋人がいる。奈津がどれだけ塩河さんを褒めても、いや童顔がいいというのも本心は、自分の恋人に向けての言葉だろう。


 私、何をそのことにほっとしてるんだろう。奈津でさえも塩河さん一人に騒いでるし、塩河さんって女性人気が高いのかな。


 ――自分の周りに、甘いもの好きな子がいた方が嬉しいから。


 頑張らなきゃな。その決意から、拳をぐっと握る。
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