契約結婚の終わらせかた番外編集
2年目~4月。ある春の日の伊織さん。




「大変だ……花子の様子がおかしい」


少しだけ顔を青くしながら、伊織さんはそう言いました。







契約が終わって本当の夫婦になった私と伊織さんだけど、あまり以前と変わらない日常。


相変わらず毎日プリンを欠かさずに食べるから、その材料は欠かせない。


そうそう。


伊織さんは半年前に土地を購入して新居を建ててくれたけど、そんなに以前から私と暮らすことを決意してくれていたことが嬉しい。あの時ちゃんとプロポーズしてくれ、感動し過ぎて一時間泣いたことは内緒。


初めて入った洗面所の鏡に写った自分の顔は悲惨だったけど……。


伊織さんは、“ありのままのおまえでいい”って言ってくれて。


目と鼻は涙のためだったけど、耳まで赤くなってたのは絶対伊織さんのせいだ、うん。


三階建ての新居の一階はおはる屋との共用部分で、子どもたちと地元の人たちの交流スペースとして造られたみたい。


さすがは伊織さん、って感心したな。


で、一階にはリビングもある。大抵ミクと太郎と花子もそこにいて、太郎と花子用には立派な水槽とちゃんとしたアクアリウムの設備も用意されて。たくさんの水草の中で二匹も気持ち良さげに泳いでる。


もちろん、お世話は伊織さんがかかりっきりでしてるけど。最近彼が何だか無口になってきてるのが気がかりで、思い切って訊ねると。彼の口からは最初の言葉が返ってきたわけでした。

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