傍にいて欲しいのは
病室
 美香は大学を卒業してから専門学校に通っている。

「明日は抜けられる授業だから、気にしないで」そう言ってくれた。

 持つべきものは親友だと心の底から感謝している。

 会社の方は同僚の由美に、明日から五日間有給にしてくれるよう、美香に代わりに打って貰って携帯でメールを入れて頼んでおいた。

 この数ヶ月、休日も返上で新商品の発売のために多忙を極めていた。それがやっと軌道に乗ったから順番に休みを取るように言われている。

 あと休みを取っていないのは、課長であるあの人と私の二人だけだった。


 美香が帰って病室に一人ぼっち。

 赤ちゃん……。そういえば少し遅れてたんだ。

 その存在すら知って貰えなかった命……。あの人と私の赤ちゃん……。

 ごめんね。ごめんなさい……。

 病室のベッドで、結局一睡も出来ずに朝が来た。


「おはようございます。検温です」看護師さんのさわやかな声。
「痛みはどうですか? 何か変ったことは?」

「おはようございます。何もありません。大丈夫です」

「八時半に検査ですから、お迎えに来ますね」


 そして検査を終え、病室で待っていた。結果は十時頃には分かるらしい。


「おはよう」

 元気な美香の声に安心する。たくさんの荷物を持って来させて、本当ごめん。

「美香、おはよう、ありがとう」
 本当に心から思ってる。感謝してる。

「何言ってるの。勝手知ったる莉奈の部屋よ。大学の時よく泊めて貰ったから、何が何処にあるのか、ぜ~んぶ知ってるわよ」
 そう言って美香は笑った。
「検査の結果は?」

「十時くらいには分かるみたい」

「そう、もうすぐね」

 美香としばらく話していたら、医師が入って来た。

「樋口莉奈さん。検査の結果、どこにも異常は認められませんでした。退院されて結構ですよ。では、車やバイクには、くれぐれも気を付けてくださいね」

「はい。お世話になりました。ありがとうございました」

 医師は優しい笑顔で病室を出て行った。

「さぁ、莉奈。着替えて帰ろう」

 支払いを済ませようと窓口に行くと相手のバイクの方が治療費よりも多目の金額を預けていかれたと名前と住所、携帯番号の書かれたメモを渡してくれた。

「へぇ、良心的な人じゃない」
 と美香。そのまま二人でタクシーで帰った。

「さぁ、着いた。莉奈、朝ご飯まだよね? 何か買って来ようか?」

「美香は?」

「私も食べなかったから、今頃お腹空いてきた。何がいい?」

「じゃあ、サンドイッチ」

「分かった。行って来るね」


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