翌日、夜の開店間際に茜さんがやってきた。
今日はお仕事らしく、ラメ入りのワンピを着て、いわゆる“ケバい”メイクをしている。


「支払いに来たのよー。橙次いる?」


準備中の札を物ともせずやってくる茜さん。彼女がいるだけで人気のない店内が賑やかになる。
厨房を覗き込んで話しかけているけど、店長から戻ってくるのはつれない返事。


「今クソ忙しいんだよ。誰か、レジ頼む」


茜さんは肩をすくめて、私を見つめた。


「ですって。お願いできる? つぐみちゃん」


たまたま、一番近くにいた私にお鉢が回ってきたようだ。


「はい。こちらにどうぞ」


レジに誘ったつもりだったけど、茜さんはいつものようにテーブルに腰掛けてしまった。
請求書と小銭が沢山入った袋を取り出しし、綺麗に整えられた爪で百円玉を十枚ずつ積み上げる。


「ちょっと細かいの多いんだけど数えてもらえる? あと領収書もちょうだいね」


お札も少しはあるけど、ほとんどは百円玉だ。
きっと参加費として集めたものなんだろう。

手間がかかるけど仕方ない。地道に数えよう。
茜さんにならうようにしながら、百円玉を積み重ねつつ、世間話でもと話しかける。


「……芋煮は上手く行きましたか?」

「ええ。楽しかったわよ。ちょーっと暑かったかな。日焼けしちゃったかも」

「全然分かりませんよ」


綺麗にお化粧された顔も、袖口からスラリと伸びる腕も真っ白だ。

この作品のキーワード
大人の恋  年の差  独身貴族  飲食店  溺愛  不器用  運命  言いなり  過去