ナックルカーブに恋して
約束の甲子園

照りつける太陽に大量の汗を流しながらたどり着いたのは、三塁側のアルプススタンド。
スクールカラーの鮮やかなブルーが眩しくて、一瞬目を閉じた。


「瑠衣(るい)!こっち、こっち!」

ふと、懐かしい声に呼ばれて見上げれば、高校三年間を汗と涙にまみれながら供にした仲間たちの顔があった。

「元気しとった?」
「遅いやん。何しとったん?」
「早くこっちに上がってきな。」

慌てて駆け上れば、逆転ホームランでも打った時のように、頭をパコパコ叩かれて、手痛い歓迎に遭った。

みんな、完全に浮かれまくって、おかしくなってるな。

「痛い痛い」と言いながらも、私もどこか微笑んでしまっている。


それも、仕方ない。
だって、こんなに嬉しいんだから。


母校であるS大附属桜川高校が念願の甲子園出場を果たした。
なんと、30年振り二度目の夏の甲子園だ。

今日は待ちに待った一回戦。
かつて同じ夢を追いかけて、夢叶わずグランドを去ったOBたちもアルプススタンドに勢ぞろいしている。
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