bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
嵐は突然やってくる


本郷主任のマグカップを割ってしまってから1週間。


本郷主任のマグカップは、保温性の高い割れにくい素材に変わった。


そのマグカップが今にも、こぼれてしまいそうなほど、今日のプロジェクトメンバーの会議は紛糾している。



「これだからお坊っちゃんは、何にもわかってねぇんだよ」

「なんだと…?」




今日の議題がなんなのかも、今やもう吹き飛んでしまうほど、今日の本郷主任は荒れている。



怒号はいつものことなのだけど、怒号の矛先は、唯野主任。



唯野主任も本郷主任の怒号に最初は静かに受け流していたもの、もうそろそろ限界のようだ。


静かに、それでもものすごく怒っているのが分かる。

返答の一言一言が、いつもの優しくて穏やかな笑みを浮かべる唯野主任とは思えないほど低い声のトーンで会議室に重く響き渡る。




そんな様子を私だけじゃなくて、神部君や竹之下先輩といったプロジェクトメンバーが心配そうに見守っていた。

 

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