bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
a cup of coffee-本郷side-

「はぁ」

大きなため息が口をついて出てしまう。

「あのさぁ、人の家にご飯食べに来て、ため息つくのやめてくれる?しかも、土曜日の夜に。よっぽど一馬暇なの?」

「いやいや、俺が誘ったんだって。香奈子、一馬にビール持ってきて」

「はいはい、旦那さま」

「なんだよ、それ」
 

夕食すらいらない程、お腹一杯になりそうな夫婦漫才(本人たちにとっては喧嘩らしい)を目の前で見せつけられるとただでさえ疲労困憊なのに余計に疲れてしまう。


今日は久しぶりに内海家の夕食に招待された。


大学の頃より少し体つきが丸くなってきている圭吾が、缶ビールをグラスに注いでくれる。

圭吾と二人で小さく乾杯すると、タイミングを見計らったかのように、いつも会社にいる時とはメイクも表情も違う香奈子が酒の肴として冷ややっこや野菜炒めを出してくれる。


「香奈子も座れば?」
「じゃ、お言葉に甘えて」

3年前、2歳年上の香奈子と結婚した圭吾は、友人の中では「姉さん女房の尻に敷かれている」ともっぱらの噂だったが、意外にも亭主関白のようで、こうして月に1、2回、俺がこの家に遊びに来る度に、同じような会話が繰り広げられている。


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