僕を愛した罪








「桐生くんはねー、あたしの未来の旦那様なのー」



漫画でしたら、
きっとハートマークが彼女の周りをグルグル回っていたでしょう。

そう思えるほど、彼女の顔は緩み切った満面の笑みでした。




「桐生くん…エヘヘ」


「…………」




妄想の世界にトリップしてしまった彼女を無視し、
僕はトンカツに齧りつきました。

かなり柔らかく、ジューシーです。

トンカツ専門店に来た気分でした。




「桐生くん。
ママの手料理美味しい?」


「ええ」




本当のことなので、素直に答えます。

すると芽衣子さんが嬉しそうに笑いました。

その緩み切った笑顔、彼女にそっくりです。





「良かったわお口に合って。
愛ちゃん、今度作り方教えてあげるわね?

未来の旦那様に作ってあげなさい?」


「はぁい!」


「め、芽衣子さん……?」





どうやら芽衣子さんは勘違いしているようです。

きっと違うんだと言っても、信じてくれなさそうです。

僕は息を吐きだすと、今度はご飯を口に運びました。







< 59 / 178 >

この作品をシェア

pagetop