魅惑の純情泥棒
おまけ

その後の話。



『もう一回、してもいい?』






「……………はぁ?!」

誠太は真っ赤な顔のままガタッと後ろの机にぶつかり、盛大に戸惑った。

甘酸っぱくも美しい初キス。それで終わらせればいいものを、いつも自分の愛しい彼女はそんな綺麗に置いておきたい思い出をめちゃくちゃにしてしまう。

大事に大事に育てた夢見る男の純情を、この生き物は魅惑の笑顔でバッサリと強引に奪って行ってしまうのだ。

「ね、お願い、もう一回だけ。」

「そんなガッついたヤりたい盛りの軽い男みたいなセリフはききたくねぇんだよ!」

「まぁまぁ、そう言わずに。」

残念な事に和穂には膨大で偏った知識が頭の中に詰め込まれている。

「馬鹿っ、やめろ…っ」


先ほどの夢見る乙女みたいな可愛い顔じゃない。

明らかに爛々と輝く好奇心に満ちた彼女の瞳に誠太は嫌な予感しか湧かなかった。


グッと乗り上げられた体重に思わず血が登る。

何考えてんだ!俺が男だってちゃんと分かってないのか?!と誠太はパニックの中、理性を掻き集めてなんとか床に押し倒されないようにもがいた。

それでも、やっぱりこんな状況で本気の抵抗なんて無理に決まっている。


好きな女に、

キスがしたいってねだられているんだ。


…体に思うような力が入らない。



和穂は、おしりを床に付けて腕だけで体を支えている誠太からあっさりマウントポジションを取った。

…本気で嫌がってないなんて顔を見ればすぐ分かる。

近付くなと言っているのに、彼の瞳は戸惑いと期待に揺れていた。

和穂は誠太の胸に手のひらを当てそっともたれる。

「ではでは、いただきまーす。」

「………っ」





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