異聞三國志
第三章諸葛庶
諸葛庶として、蜀の宮廷勤めを始めた士郎であった。

一方、理佐子は、とりあえずは孔明宅に留まることになった。

まだ、祝言もあげていなかったし、この時代の習慣や花嫁修行をする必要があったのである。士郎の屋敷がまだないことも一因ではあった。


士郎は、主に事務方の仕事を任されていた。が、未来のことを知っているからと孔明には再三呼び出された。事務仕事では、ちょうど荷物の中にあった電卓が重宝した。ソーラーだから、昼間ならば平気で使えたからである。携帯などは電池式であるために、電池が切れることを恐れて、使わなかった。電卓は、薬草取りの時に使うかと念のため持ち込んだものであった。


しかし、このことが思わぬ効果をもたらした。事務処理能力があるとして、同僚からの信頼を得たこと。更には自分で何かもやらないと気が済まない孔明から、事務仕事を任せられるようになったことである。やはり、正確で迅速であったので、孔明から深い信頼を得たからである。このことは孔明事務負担の軽減をも意味した。


『これで、少しは丞相のご負担も減ったはず。』


士郎は、得意げであった。

しかし、まだ孔明には決裁の雑務が多数残っていた。

全てを自分が決裁しないと気が済まないからであった。


『これでは幾分かの軽減であり、過労死を防ぐまでには、至っていないな。どうしたら、いいのか。』


士郎は悩んでいた。


そんな時期に士郎の屋敷が完成した。


理佐子も士郎と結婚して、家庭に入る決心をしたようであった。


そんな二人がついに祝言をあげたのであった。


喜ぶ二人。


だが、同時に士郎はまだ孔明の体力温存策を見いだせないでいた。
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