異聞三國志
第二章 三世紀
「ま、まさか・・・、そんな・・・。」


しかし、急遽進路が逆になった・・・。


南へ・・・。


士郎の予感は確信に変わりつつあった・・・。


“蜀”


という旗


劉という旗


がはためいていたからである。


そして、誰一人洋服ではなく、和服のような出で立ちであったこと。


髪は男性も束ねているだけということに。


士郎はかなりな動揺をしつつも、似たような光景を見ていたので、わかったのである。


ここは、何時のどこであるのかが、大体。


「理沙子、おい理沙子」


彼らは一人に一頭ずつの馬に乗っていた。でも縄は前後に繋がれていたのである。


理沙子はなれない馬の上で憔悴していた。


「士郎ちゃん。」


答えるのが、やっとであった。


「いいか良く聞けよ。俺達はとんでもないところへ、来てしまったんだ、残念だけど。」


「とんでもないところって?」


「中国は中国でも、大昔の中国、それも三世紀の・・・。」


「士郎ちゃん、大丈夫?そんなことあるわけないし。だいいち、時間を遡ることなんて、出来ないんだから。」


「いや、残念だけど間違いない。本当だ・・・。」

士郎はここが三世紀である理由を告げた。


理沙子には、そう簡単に把握は出来なかった。しかし、彼女にも異変は感じられた。

彼女は泣き崩れた。


「家に帰りたい・・・。」


士郎は彼女の涙を見て更に自分も動揺したが、意を決して


「辛いのはわかる。だけど、ここで死ぬわけにはいかない。帰らないと、あの時代に。」

「でも、どうやって?」

「わからないけど、今は生き抜くんだ。」


士郎は自分も挫けそうであったが、理沙子のために辛うじて踏み留まっていた。理沙子を守りたいとの気持ちだけが支えであった。

“とりあえず、どこへ連れていかれるのか”

[到成都]の石碑が見えて来た。
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