異聞三國志
第10章 敵味方
こうして、許昌を境に黄河の南は東を呉、西を蜀が占領することになった。


魏は黄河の北、河北地方のみとなり、首都をギョウに移した。


魏軍の主力の司馬懿軍を入れて、更に献帝まで確保した蜀軍はかなりの優位にたった。


しかし、魏と呉は密かに通じようとしていた。このままだと蜀の天下になることを両国は危惧したのである。


そんな中、士郎は長安の病院で勤務に励んでいた。理佐子も士郎を助け、看護師のような働きをしていた。


忙しくも、二人いや三人でいられる日々は充実していて、幸せだった。和こと和男もすくすくと成長していた。

そんな幸せもつかの間、虞平が呉に帰ることになった。

『わしも故郷が恋しくなってのう。』


『虞平殿には世話になりぱなっしで、すまなかった。またいつか会おう。子瑜[諸葛瑾のこと、孔明の兄にあたる]殿や元遜[諸葛恪のこと、諸葛瑾の息子いわば士郎の仮の従兄弟になる]にもよしなに。』


『わかった。また会おうぞ、きっと。』


『うむ、さらばだ。さようなら。』


士郎は涙がつたうのを抑えきれなかった。理佐子も泣いていた。
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