控え目に甘く、想いは直線的
人生初のデート
思いもよらなくても、人生初めてのデートだ。初めての相手が部長なのが不思議だけど。


映画館が入っているショッピングモールを部長と歩く。人の多い通路をスムーズに掻き分けて歩く部長を見失なわないようにと必死で私も足を進ませるが、距離が徐々に開いていく。

レストランが混んでいるだろうからと急いでいるのは分かる。だけど、もう少しゆっくり歩いてくれないかな。

私の思いが伝わったのか部長がチラリと振り向き、スピードを緩めた。そのとき、私は部長のシャツの袖口を引っ張ってしまった。

追い付いた! とつい掴んでしまったのだ……。

掴んだ袖口に部長の視線がいったから、慌てて離す。しかし、いけないことをしたかのように離した手を捕らえられてしまう。


「す、すいません!」


「ごめん、急ぎすぎたな」


「え?」


捕らえられた手は一瞬だけ離れ、すぐに繋がる。私の手はしっかりと握られた。まさか手を繋ぐなんて!

手を繋いで歩くのは、幼稚園の頃以来かもしれない。あの頃は浮き浮きしながら歩いたけど、今はドキドキしている。
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