控え目に甘く、想いは直線的
クールな嫉妬
「行ってきます」


「行ってらっしゃい。今夜はお誕生日会だっけ?」


「うん」


家を出ようとすると、ダイニングテーブルを拭いている母から夕食の確認をされる。

5月生まれの大石さんの誕生日会が今夜だった。三日前のミーティング時に突然部長から言われた。

来週にはバーベキューがあるから誕生日会は延期だと思っていた矢先だったので、やることに少し驚いた。

大石さんが主役だからと今回は部長がレストランを予約した。どこのレストランかは当日のお楽しみだというけど、また高級な場所なのではないかと昨夜から妙な緊張している。


「悪いけど、今夜急用が入ったから、誕生日会は延期にする。来月にやろうと思うが、いいか?」


「あー、まあいいですけど、要さんが、忙しいのなら俺は別に野々宮さんと二人でやるのでもいいですよ。せっかく予約してくれているんですしね。ね、野々宮さん、二人でもいいよね?」


大石さんと駅の改札で会い、揃って出勤するとすぐに部長から今夜の中止を告げられた。
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