白衣の王子に迫られました。
王子喪失




それからというもの、森下君は春野さんがわざと放り投げた仕事を片っ端から片づけてくれた。

有限実行とは、こういうことを言うのだろう。

「ありがとう、森下君。すごく助かってる」

ナーステーションの片隅で、私はたまたま近くにいた森下君に声を掛けた。

「いえ。それより、今日の夕ご飯、リクエストはありますか?」

森下君はニッコリとほほ笑みながらそんなことを聞いてくる。

「そうだな……、オムライス!」

以前作ってくれたオムライスが殊の外絶品で、もう一度食べたいと思っていた。

ふわふわのタマゴと、デミグラスソース。そこら辺のレストランより美味しい。その味を想像したからか、ついつい顔が綻んでしまう。

「食いしん坊ですね、先生は。よだれ、垂れてますよ」

「へ? ……うそっ!」

口元に手をやる。

すると森下君は、プッと噴出した。

「嘘です」

「ちょっと、酷い~!」

彼の肩を軽くたたいた。その時たまたま視界に春野さんが入ってきた。

(やばい! 見られた?)

私は慌てて手を引っ込めると、森下君と距離を取る。

「そういう事で、よろしくね」

私の態度が急に変わったとこが不思議だったのか、森下くんは少し首を傾げつつ「はい、では後程」そういって仕事に戻っていった。


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