白い隊服
四.

朝稽古にて



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まだ誰も起きていないような早朝。


空が薄暗い中、私は道着に着替える。

今日から柔術の稽古をするため道場へ行く。


柔術の稽古がしたいと申し出たら、早朝なら誰も道場を使っていないから人目につかなくてすむ、と土方副長から許可を頂いたのだ。




ここはほとんどが剣客の集まりだし、しょうがないとは思うが、しかし本当のところは相手が欲しいのだ。

柔術は剣術と違って相手がいないと成り立たない。

江戸の道場は師範や兄弟子も多かったので相手に困ることはなかった。


だが、今の私は女だと悟られてはならないため、こうしてこっそり鍛錬するしかない。

まあ、鍛錬といっても相手がいないので殆どは腹筋や背筋など、身体を鍛えているだけに過ぎないが…。







道場へ着き、礼をして中へ入る。


まず、雑巾で床を端から端まで一気に走って掃除する。

これは一人では正直きついが、脚力が鍛えられるのだ。


それが終わったら、準備運動をしてよく身体を解してから腹筋や腕立て伏せなど、身体作りの運動。


そして受け身の練習。

バァンッと受け身の音が道場に響き渡る。



一人でやっているとなんとも間抜けな光景だ。



やはり兄弟子や師範が恋しい。

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