心の中を開く鍵
『今度の土曜日、休みだから出かけて食事をしよう』

そう言ってくれたのは嬉しかった。

でも、少し迷ってもいた。
その頃には考えていたから、別れ話をしようかと。

とにかく、ちゃんと話をしよう。
自分の気持ちを言ってみよう。

そう思って、それなりに悩んで、出来るだけ可愛らしい格好をしてデートの待ち合わせに向かった。

一時間。待っても彼は現れなかった。

二時間。どうかしたのかと思って、でも連絡しても電源が入っていなかった。

三時間。共通の知人に、メールで彼の居場所を聞いてみた。

【うちで酔いつぶれて寝てるけど、起こす?】

その返事に呆れ果てた。

浮気をしなければ、それでいいと言うわけではないと思う。

丁寧に【特に用はないから。寝させてあげておいてください】と返信して、それから彼の部屋に向かった。

渡された合鍵で部屋のドアを開け、誰もいない彼の部屋に上がると途中コンビニで買ったごみ袋に自分の私物を放り込む。

あまり使われることの無かった歯ブラシや部屋着。
それに忘れたと見せかけて“彼女アピール”の為に置いていった品物たち。

それをごみ袋に詰め込んで、部屋を出た。

最後に合鍵についたキーホルダーを外し、何もついていない鍵を眺める。

鍵をもらった時は嬉しかった。

彼女の“証し”みたいで嬉しかった。

だけど、友達と一緒にいる方が楽しいなら……私の存在なんてなくてもいいでしょう?
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