心の中を開く鍵
結局、段ボールは翔梧に運んでもらい。会議室につくとニヤニヤしている顧問を横に見ながら彼は無表情で梱包を剥がしてくれた。

「今日は、常務が欠席でしたか?」

「はい。私の方から、後程お渡ししておきます」

礼儀正しく受け渡しをしていたら、顧問には本当につまらなさそうな顔をされたけど、顧問の玩具になるつもりは二人ともさらさらないし。
唐沢さんと羽賀部長が入室して来て、お茶を出してからミーティングが始まった。

澄ました顔で唐沢さんの隣に立っていたら、唐沢さんに微かに苦笑される。

「顧問に変なところ見られたでしょ」

……情報早すぎやしませんかね?

顔をしかめると、唐沢さんが持っていたファイルを見せるフリをしながら身体を寄せる。

「顧問から、メールが来たわよ。高崎さんと山根さんはどうなっているのかって」

「……やめましょうよ。どうにもなりませんから」

「後で相談に乗ってあげるわ」

こそこそ話し合って、溜め息をついた。

もう、色んな意味でどうにかして欲しい。

ミーティングが終わると、翔梧は営業スマイルでさっさと退散して、私は私で顧問に呼び止められる前に茶器を片付けに入る。

一段落して、デスクに座る唐沢さんのところに戻ったら、葛西主任が待っていた。

「お疲れさまです。主任」

「お疲れさまです。山根さんに確認がありまして。よろしいですか?」

……嫌な予感しかしませんよ。

だけど、笑みを貼り付けて首を傾げる。

「なんでしょうか?」

「高崎さんと山根さんは、大学の先輩と後輩の仲だと言うことでよいですか?」

……溜め息をついて頭を抱えそうになった。
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