心の中を開く鍵
だからって、わざわざそれを伝えるつもりはないわ。

「……自意識過剰って、人に言われたことがない?」

「ないな。最近じゃ、だんまり不気味とは言われたことがあるが」

……翔梧が黙っていて、不気味なの? 想像つかないんだけど。

「俺は営業入社だったから、取引先だとそれなりに笑うこともあるが……」

笑わないってこと?

「そう言えば、主任とかが言っていたよね。いつも“無表情”とか……」

パタンとメニューを閉じて、翔梧はニヤリとして顔を上げる。

「他の奴らに愛想振り撒いても、肝心な女に逃げられてりゃ世話ないしな」

「……それが私のことなら、逃げたわけじゃないし」

「俺が捨てられたんだろうなー」

「…………」

あのね? そんなことを微笑みを浮かべながら、懐かしそうに言われたって困るってば。

眉を下げて、近づいてきた店員さんに注文を始めた翔梧を無言で眺める。

そして、注文を終えて店員さんが離れていくと、私の表情に気がついた翔梧が吹き出した。

「お前は相変わらず真面目だな」

「そうでもないよ……昔よりは手を抜く事も覚えたし、あまり考えなくなった」

と、思うんだけど。考えるときには考える。

考えて……偉そうに腕を組んた翔梧を見て首を傾げる。

「翔梧は、どうしたいの?」

キョトンとした顔で見つめられて、しばらく沈黙が落ちた。

……いや。あの。そんな不思議そうにまじまじ見つめられても、何て言うかさ。

「……どうって。俺はちゃんと言ったと思うんだけど」

口説くとは聞いたけど。飄々として、腕なんて組んでる姿を見ると、何だか……。

「翔梧……親父になったよねぇ」

「俺が親父なら、お前も……いや、お前はまだ25歳か。でも、まぁ、早く親父になりたいよな」

「は?」

何言ってんのあんた、状態なんだけど。
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