心の中を開く鍵
*****



そして約束した土曜日の10時。

デートではないから、と言い訳をしつつ、洗いざらしのTシャツにパーカーを羽織り、それにジーンズを合わせて、普段着感マックスで待ち合わせ場所に向かったら。

似たような格好の翔梧にニヤリとされた。

……図らずもペアルックになってる。

「着替えてきてもいい?」

「馬鹿かお前」

「だって、恥ずかしいわー。翔梧とペアルックって」

「似たようなジーンズに、着てるパーカーが黒ってくらいしか似てないだろ。いいから行くぞ」

手を繋がれて瞬きした。

……翔梧って、こんなに強引な人だったかな。

「とりあえず、映画見てから飯食おう」

「いいけど……ところで、翔梧が見たい映画って何? なんの映画を見たいのか聞き忘れた」

「ああ。ホラー映画」

……ピタリと足を止めた私を、翔梧はびっくりして振り返る。

「真由、苦手だったか?」

「そんなことは……」

バリバリありまくりだわ。

苦手なのよ、幽霊とか化け物とか。

外国製のホラー映画のパターンとしては“驚かし要素”がたくさんって言うか。いかにも日本的な、唐突に“そこにいる”パターンも苦手だし。

「最近、実生活でもホラーなのに、わざわざホラー見に行くとか……」

「そりゃ。どういう意味だよ」

ハッキリと断れないまま、映画館に連れていかれた。

楽しそうにパンフレットとポップコーンを買っている翔梧を眺め、飲み物を買っていると、自然とポスターが目に入る。

血だらけの人が、手を伸ばしているポスターをじっと見て、それから目を細めた。

ゾンビ系の映画っぽい。

白い目をしたハゲのおっさんが、追っかけてくる映画だと思えばいいかな。

それにしても、翔梧がホラー好きだとは知らなかったかも。
思えば映画館に映画を見に来たこともなかったから……コメディやバラエティが好きなのは覚えているんだけどな。

「真由。とりあえず後ろの方に座るか?」

「うん」

後ろ側の席について、しばらくすると映画が始まった。

そして……。

始まって30分もした頃、翔梧は無言で私を抱き抱えると、映画館のロビーに連れ出してくれた。
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