心の中を開く鍵
「じゃあ、結婚する?」

さらっと飛び出してきた言葉に顔をしかめた。

「それは話が飛びすぎだから! それにそんなこと軽々しく言わないで!」

どういう思考回路してんの!
それに“じゃあ”って何よ、“じゃあ”って!

「いやー……真面目な顔して、いかにも“結婚してくれ”って、照れるだろー。告白するのも相当な覚悟だぞ」

「今までも“かなりの爆弾発言”しておいて、今さら何を言ってるのよ!」

今までも『口説く』とか『つきまとう』とか『ずっと好きだった』だとか、あとは『結婚まで考えていた』とまで、いろいろな爆弾ばら撒いていたと思うんだけど?

「まぁ……それはそれだろ~。と言うか、真由」

「なによ!」

「今回の“好きだ”は受け止めてくれたみたいだな?」

満面の笑みを眺めながら、みるみる顔を赤らめる。

「う……」

「でも、真由はきっと意地っ張りだから、素直に認めないと思うし、どうしようか」

「はい?」

じっと見つめられて、慌てる。
何、何か企んでる? 私、何されるの?

やめてー!

「す、好きだから!」

叫ぶようにして言うと、翔梧の表情が奇妙に歪んで、それから堪えきれないようにいきなり吹き出した。

声をあげて笑う翔梧を眺めて、私の頭の中はハテナマークで埋め尽くされる。

「翔梧……?」

「いやぁ……それとなく“嫌いじゃない”くらいでもいいか、と思ってたけど、まさか直球でくるとは思わなかったな」

「ば、馬鹿じゃない!?」

「こう見えて、案外真剣だ。だいたいさ、真由はマジになると逃げるから」

それは……。

「そうかもしれないけど! 決めるときにはちゃんとキメて欲しいのが乙女心だよ!」

「乙女心とか言われてもなー」

翔梧は立ち上がり膝の土を払うと、何を思ったのか私をひょいっと持ち上げた。
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