心の中を開く鍵
羽賀部長と砂川さんは飲んでいたお茶に仲良く咳き込み、営業部の数名は吹き出して、その他の人は絶句して固まっている。

言われた翔梧は固まっていたひとりで、でも立ち直りも早かった。

真面目な表情をすると、顧問を真っ直ぐに見つめる。

「僕のことはプロジェクトには関係ありません。それにそれはプライベートな事ですから、お答えするつもりはありません」

よく言った翔梧!

内心で拍手をしていると、葛西主任は首を振る。

「まさか遊びじゃあるまいの?」

顧問があっけらかんと言ったところで、葛西主任が動いた。

「顧問。それ以上ミーティングの邪魔をされるなら、うちの嫁にチョコレートと葉巻の隠し場所を全てバラしますよ」

「それは……また別の話じゃろ?」

「バラしますか。そうですか。さっそくそうしましょう」

そう言って会議室を出ていった主任を、顧問は慌てて追いかけていった。

それを呆然と見送り、しばらくしてから唐沢さんがニコリと翔梧を見る。

「……お見苦しいところを」

「いえ。別にいいんです。僕は」

軽く咳払いして、翔梧は書類をまとめると頷いた。

「話を戻します」

淡々と続ける翔梧に、立ち直り始めるミーティング。
それでも“山根”の名字に気がついた数人がチラチラ視線が痛いけど。

ミーティングが終わって、バラバラと出ていく人の中、羽賀部長と砂川営業部長さんと翔梧が真剣な表情で話している。

それを横目で見ながら、唐沢さんと茶器を片付けて、とりあえず会議室を後にした。

唐沢さんはそのまま顧問に小言を言いに行き、私は茶器を洗ってしまう。

それから秘書室に戻ると、爆笑している唐沢さんと、脱力している葛西主任を見つけた。
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