イジワル同居人は御曹司!?

1. 兄、帰る

初秋の麗らかな陽射しが窓から降り注ぐ。

私は畳の上で腹ばいになり小説を読みながらビールを嗜む。

アルコールが程よく回り、リラックスするとジンワリとした眠気に包まれてきた。

「だあー」

思わずおっさんのようなため息が出る。

ゴロリと仰向けに横たわり、お腹の上に本を乗っける。

瞼が徐々に重くなってきた。

ああ…これぞ至福の一時。

そのまま緩々と浅い眠りに落ちていく。


「おい、起きろ」

頭上から突然不機嫌な声が落ちてきた。

私は心地よい眠りから強制的に引き戻される。

ゆっくり重たい瞼を上げると、誰かが私の顔を覗きこんでいる。

ど…泥棒？！

身の危険を感じ一気に意識が覚醒する。

慌てて上半身を起こした。

「…あなたは誰？」

私は思いっきり訝しい視線を向ける。

そこに立っていたのは眼鏡を掛けたスーツ姿の男性だった。

きちんとした身なりをしているので物騒な感じはしない。

しかし、直ぐ脇にはデッカイトランクが置いてあるのが目についた。

もしかしたら真面目なサラリーマンを装って、周囲の目を誤魔化すためにスーツを着ているだけかもしれない。

それでもって、そのデカイいトランクには盗んだ戦利品が入っていたらどうしよう。

「お前こそ誰だ？」

男は表情一つ変えることなく尋ねる。

「私はこの家の住人よ！さっさと出ていかないと警察呼ぶからね！」

ギュッと男を睨みつけた。

「それはこっちの台詞だが」

しかし、男は怯まないどころか無表情のまま、まさかの台詞を返してくる。

「はい？」私はきょとんとして首を傾げた。