イジワル同居人は御曹司!?
5. 兄の意外な一面
「何を考えているんだ!あのムッツリエロメガネ!」

思わず声を張ると、歩が口元に人差し指を当てて「シっ!」と窘められる。

興奮して周りが見えなくなっていた。

定時後に歩が箱根旅行のお土産ーーー勿論、彼と一緒に行ったーーーを16階に届けに来てくれたので給湯室で立話に花を咲かせる。

「ご、ごめん。つい」

バツが悪くなって、私はコホンと小さく咳払いする。

「謝るのはこっちよ。兄が醜態を晒してごめんなさい」

歩は小さくため息をつき、困ったエロメガネねぇ、と小声で呟いた。

「手前ミソになるけども、兄は昔から女子に人気があるのよ。一癖ある性格は接してみなきゃ解らないじゃない?」

歩は苦笑いを浮かべる。

整った目鼻立ちにスラリと背が高い奏さんの姿を思い浮かべる。

外見だけで充分女性を惹きつける魅力があるのは否めない。

いじめ抜かれている私でもたまに見惚れてしまう時があるほどだ。

「まあ、確かに。本性を知らなかったら素敵な人だって思うよね」

「長男で大事に育てられて来たから世間知らずなとこがあってね。たまに変な女に引っかかっちゃうみたい」

「でも同じ会社の人だったみたいよ」

「あら、案外節操ないのね」

歩はまるで他人事のように言う。
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