きみの愛なら疑わない

(心に穴のあいた女)

◇◇◇◇◇



美麗さんが式場から消えて騒然とする中で、慶太と式場に残った美麗さんの親族がスタッフに呼ばれた。
式場の外に出るよう促されても慶太は呆然と動けないでいた。
そんな慶太に一人の男の子が近寄るのを見た。年は私と変わらないだろう男の子は慶太よりも背が高く、遠くからでも分かる整った顔をしていた。きっと美麗さんに近い親族だ。城藤の人間は品格が顔にも出るのか、美形が多い印象があった。

スタッフに連れられて参列者の横を通る慶太と親族は気力や生気を失った顔をして、美麗さんの母親だと思われる女性は口にハンカチを当てて泣いていた。

チャペルを飛び出した美麗さんと匠はどこまで行ったのだろう。妊娠して体調も良くないはずの美麗さんがヒールで長い時間走れるわけがない。きっと後を追った父親やスタッフに止められたかもしれない。今頃慶太や親族を交えて話し合いの最中だろう。





しばらくして参列者はスタッフに披露宴会場に案内された。
予定より少し遅れて始まった披露宴は通常の新郎新婦の入場ではなく、会場の照明は明るいままBGMもピアニストの即興で演奏された。
大注目の中で扉を開けて現れたのは慶太一人だけだった。

一礼した慶太はゆっくりと雛壇の横まで歩くとスタンドマイクの前に立った。

「本日はお見苦しいところをお見せして申し訳ございませんでした。今後僕たちがどうなるかは分かりませんが、お集まりくださった皆様方のために精一杯の用意をさせていただきました。居心地はよくないかと思いますが、どうぞ飲んで食べていってください」

抑揚のない、感情が読み取れない挨拶だった。泣いた様子もなく、悲しんでいないのではとさえ思った人もいたかもしれない。
それでも私は慶太がとてつもないショックを受けていることを知っている。あの美麗さんを愛して結婚しようとしたのはお金目当てではないと知っているから。

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