あの頃は退鬼師と鬼だったけど
満月と鬼
ーーー待ってますから・・・
必ず貴方にまた会えると信じてます・・・・
いつの頃からだろう。
満月の夜になると必ずみる夢がある。
その夢では、私は身の丈程ある刀を手足のように扱い、目の前にいる「敵」と戦っている。その戦いは時代劇で見るような人間同士の戦いではなく、超人的な跳躍力や攻撃力をぶつけ合う、まるでゲームやアニメといった2次元のような戦い。
そして、場所はいつも決まって何処かの屋敷の庭。
私の戦う「敵」は、月夜でも分かるほど鮮やかな着物を身に纏いどこかの国の姫君と間違えるほど美しい人だった。けれど、彼女は私の敵。そして、彼女もまた、この戦いの1人なのだから人間ではない。人間離れの動きと頭に生えた2本の角が何よりも証拠だった。
私はその姫と戦うのだ。
姫の手には獣のような鋭く長い爪が伸びていて、攻撃をする度に私の着物も彼女の着物の裾も破けていく。
何度も何度も刃を交え、血を飛ばし、桜吹雪が視界を埋め尽くすと必ずやって来る。私と彼女の最期。
終わりは必ず私の刀が姫の胸を貫く。
そして、満月を背に、姫はその命を桜の花弁と共に散らすのだ・・・・