鉢植右から3番目
第4章 物理的距離と心の距離。

1、愛情の塊。



 翌日。ヤツが起きるより早く起きて朝食を作って置いておき、連絡ボードにマジックで書き殴った。

「お盆でバイトも休みだし、しばらく実家に戻ります。都」

 事実上、ヤツとは夫婦でないから実家という単語は使いたくない。だがしかし、家を出ている身ではあるのでそう言うしかない。

 同居人としては素晴らしいが、男として意識してしまえば実にムカつく喧嘩(ま、一方的に怒っていたのは私。それは判っている)をしたので、暖簾に腕押し状態が嫌で逃げることにしたのだ。

 アッデュー!ダレダレ面倒臭がり宇宙人!

 しばらく、なんて期間は決めてない。

 だけどすぐに契約解除で離婚届けってわけでもない。

 微妙な話題で沸騰してしまったし、合わせる顔がないっていうのが正直なところ。恥かしいのだ、とどのつまり。いやあーねえ、奥様ったら!と爽やかな空に手刀を降り下ろす。

 とにかく、ヤツが起きる前に全ての家事を終わらせて、私は鞄一つでアパートを脱出した。

 まだ早朝の光と風が私を包む。駅までゆっくりと歩いて、昨日の喧嘩(何度も言うが、怒ってたのは私だけ)のことを思い返したりしていた。

 ・・・・言っちゃったなあ~・・・。

 頭に血が上ったとはいえ、結構露骨なことを言っちゃいました。あーあ。

 あの後はそのまま部屋から出なかったから、やつがどうしたのかは知らない。音だけで想像すると、いつものようにお風呂に入り、座椅子でダレダレと読書をして、寝たらしかった。

 怒った私の部屋を訪ねての話し合いは興味がなかったらしい。・・・もしくは、ただ単に面倒臭かったか。そっちの方が有り得る。


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