…だから、キミを追いかけて
新たなトキメキ
波留は駐車場を出ると、隣町方面に向かって車を走らせた。

「いいとこって、隣町にあんの?」

さっき買った缶コーヒーを飲みながら聞く。
運転席の波留は生欠伸を噛みしめて、「まぁな」と呟いた。

山間に造られた一本道の農道を進む。
道すがら、山の谷間に建てられた風力発電に気がついた。

「あのプロペラってスゴいよね。巨人が立っているみたいで」

そそり立つ柱は数十メートルと長く、3枚羽根を支えるにしては太過ぎるんじゃないかとも思える。
そんな感想を述べると、波留がこんな話をし始めた。

「俺、前に海沿いに列なして建っとるのを見たことある。スゴかったぞ!巨人に護られとる海岸みてーで」
「へぇー…」

「あんなの町中にあったら怖ぇーよな。倒れてきたら、家が何戸も壊される」
「そうやね、…あっ…でも、何処にあってもいい気はしないよ。山の中にあっても、海の側にあっても…」

所詮は人工物。自然とは折り合わない。

「同感!無いに越したことねぇ」

電力問題無視の会話。変なことで気が合った。


農道を突っ切って国道を横切る。
山に向かって走り続ける車窓から『千畳敷』と書かれた看板が見えてきた。


「千畳敷って何⁉︎ そこ行くの⁉︎ 」

運転手の横顔を振り返った。

「ああ。なかなか眺めがええんや」
「ふぅん…」

故郷再発見…と言っていた意味がようやく掴めてきた。
景色がいいとこに連れてってくれるって訳か。
< 115 / 225 >

この作品をシェア

pagetop