…だから、キミを追いかけて
取り返せないもの
高校時代、よく男子に呼び出された。

大抵は校舎の裏で、時には皆の目の前で。


『好きです!付き合って下さい!』


告白される度に、自分の心に問いかけた。

『好きって何?』
『付き合うって何…?』


篩にかけてた訳じゃない。ただ…真理が知りたかっただけ…。



『生意気だ』…と、女子達から陰口を叩かれた。
人気のある男子からの告白を断ると、必ずそう囁かれた。

迷惑だった。
自分の心の中に棲む人でもない人から、思いを告げられるのが苦痛だった…。


(航は違ったの……?)

海を眺めながら自問していた。

夕日に照らされる海面が眩しい。
陽柱が海面に立って、まるで、海の上に作られた道のようだ…。



(………違ったと思う……)


長い時間をかけて答えを出した。
航とのことを思うと、一言では言い切れない気持ちになる。
全てを賭けてたような気がする。

全身全霊をかけて、想っていた様な気がするーーー



(でも……)



陽柱が歪む。
目の中にできる涙の海に、景色が霞んでいく。
頬を伝うものを、拭う気力も湧かない。

全部消してしまいたい。

自分も……

過去も……


今も…………





最低だ…。

今日の自分は、最低だった……。

自分と同じ位置に、波留を置こうとした…。

あの人は自分の気持ちを押し殺したまま、海斗さんと澄良の側にいるのに。


私のように

逃げ出したりしていないのにーーー



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