…だから、キミを追いかけて
傷つけ合うヒト…
翌日も、晴天だった。
「猛暑日が続いている」と、テレビで気象予報士が語っていた。


(どうりで、暑い訳だ…)

外の熱気が窓ガラスを越しに反射している。夏空は高くて、薄いすじ雲が広がっていた。



「旅館の女将さんがね、夕夏に仲居を手伝って欲しいんやって。お祭りの日があるやろ?あん時だけでいいからって」

昼前に帰ってきた母からバイトの誘いがあった。

「えー⁉︎ 私の誕生日なのに⁉︎ やだー」
「そう言わんと頼むわ。今年は予約客が多くて、てんてこ舞いになりそうな雰囲気なんよ」

バイト代は弾んでくれると言う。

お盆の最終日。誕生日だけど、予定は何もない。

貯金や退職金はある。でも、心許ないのが現状。収入は多ければ多い方が確かに助かる。



「……分かった。引き受ける」



たった1日。


その1日が、この後の生き方を変えるなんて、何も知らずにいたーー。







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