恋する歌舞伎
お染を追ってきた母の迎えもあり、お染は舟で、久松は駕籠で油屋へと帰ってゆく。

大好きな人の花嫁となる最高の日が、一転して絶望の日に変わってしまった。にも関わらず、尼になったお光はそんな2人の姿が見えなくなるまで気丈にふるまい、送り出す。

だが久松の影が見えなくなり、とうとう堪え切れなくなったお光は、久作にすがりつき1人の少女として泣くのだった。


美男美女の大恋愛は美しく、華々しい。

だがちょっと視点を変えると、地味だけど、自分の身を呈しても想いつづける純粋な少女の犠牲の上に成り立っているともいえる。

このお話、もとはお染と久松を主軸に描いた長編だが、「野崎村の段」は田舎の乙女・お光にスポットが当たっている。

歌舞伎ではこの段のみが繰り返し上演され人気となっていることからも、今も昔も、お光に共感する女性が多いといえるのかもしれない。


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