恋する歌舞伎
主人公の六助は剣術の名手であり、その実力は領主から仕官の誘いを受けるほど。

しかしその申し出はなかなか受け入れられないので、
「六助に勝った者には知行(武士に支給された土地)を与え、召しかかえる」
という触れ書きまで出ている。

これに名乗りをあげたのは弾正(だんじょう)という男。

大勢が見守るなか立会いが行われ、六助はこの試合に負けてしまう。

しかしこの勝負、実は六助が弾正に勝ちを譲った八百長試合だったのだ。

六助は数日前に偶然、弾正と出会っており、
「余命幾ばくもない母親のために孝行がしたいので勝ちを譲って欲しい」
とあらかじめ頼んでいたのだ。

心優しい六助はその孝行心に感じ入り、約束通りわざと試合に負けたのだった。

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