ドクター
始まり

冷たい風が頬に吹き流れる。
雪がすっかり溶け、新緑の春を迎えたが、いまだ寒さは残る。
暖かな日差しが顔に当たり始めたのか、少しずつ目頭が温まっていく。
目をつむっていても眩しい。

公園のベンチで横になっていると、遠くの方で親子が何やら楽しそうに会話をしている。
会話を聞いていると、家が恋しくなってくる。



さあ、私を待つ人がいる家へ、早く帰ろう。



こんなことを思える日が来るとは、全く思ってもなかった。




ベンチから体を起こすと、誰かが私を呼ぶ声がする。
私はその声のする方へゆっくり歩いていく。

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