ドクター
心の格闘

実(みのる)の想い


今日俺は、大学時代の友人神谷信一と久しぶりに居酒屋へ来ている。
信一は俺の人生で友達になった誰よりも腹を割って話せる相手だ。
お互い医学部時代では、がむしゃらに勉強して適度に遊んできた。
それぞれ違う病院で働いている。
信一は心臓を専門にしている。最後に飲みに行ったのは何年前だろう・・・。



そんなことを考えていると、トイレに行っていた信一が戻ってきた。








「実、結構飲んだな。」






「あぁ、今日は酔い潰れたい。」






ふらふらになった実は、まだ飲もうとしているのか、店員に焼酎のロックを頼んだ。








「どうした?」








「・・・妹の話、したよな?」










「あぁ、本当に血が繋がってるか分からない、入院中の妹か?」







「そうだ。






最初はな、面倒なことになったと思ってた。」







「それで?」









「今は・・・・・・・・・










愛くるしくてしょうがない。






他の患者とは同等の扱いをしないといけない。







けど・・・、夜中も心配で頻繁に見に行ってしまうんだ。」







「帰ってないのか?」







「あぁ、ほとんど。
家に帰っても落ち着かない。






今まで家族というものがいなかったから、兄妹ってこういうものなんだって思ってた。







24時間、あいつがどうしてるか、体調崩してたり、治療で苦しんでいるんじゃないかとか・・・・・・・・・。






病院から抜け出した時や喘息の発作が出た時なんて、いてもたってもいられなかった。






俺は主治医じゃないから、直接治療をしてやることは、あまりない。ほとんどは見てることしかできない。






だからか、ずっと、そばにいてやりたいと思う。







そばにいてやりたいよりも、そばにいたい。」

















俺は自分の気持ちを全て話した。







信一は、黙って聞いてくれた。








そして最後に、
  







「早いところ、DNA鑑定を受けるんだな。


  



もし本当の妹なら、兄として妹を大切にしろ。









妹ではないなら、好きなだけ愛せばいい。」










妹かもしれないと言われ、妹と思っていたのに、信一の言葉を聞いて、妹であったらどうしようと思う気持ちでいっぱいになった。






DNA鑑定で妹だと分かったら、俺はどうなってしまうのか。
そして、妹でないと分かったら、この気持ちを抑えられるのか。







仮にも一回り違うんだ。






こんなこと、あっていいのか。








俺は実加とあってから、実加のことで頭がいっぱいだった。




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