その愛の終わりに
霜月に
壱
女学校を卒業し、十八歳で結婚。
まだ子供はいないものの、夫とはうまくいっているほうだし、姑との仲も悪くない。
嫁ぎ先も男爵家と、私は同級生の中でもとりわけ恵まれているほうだ。
それはわかっている。
わかっているけど――――――――――
何か、物足りない。
何かが、私の中で燻っている。
何をそんなに渇望しているのかは、他でもない私自身が一番わかっていた。
私は、恋をしてみたいのだ。
二十二にもなった大人が、なにを乙女のようなことをと私とて思っている。
それでも、古今東西、どんな人間をも翻弄する恋という感情を、私は知りたい。
心の奥底で、私はそんな夢見がちなことを考えていた。
けれど、そろそろ諦めの境地にも差し掛かってきている。
まったく出会いの場がなかったわけではないのに、ついぞ恋を知ることなく結婚まで辿り着いてしまった私には、結局縁のないものだったのだ。
だから、私は今日も恋物語に夢をみる――――――――――
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