「先生、料亭てすって。私、料亭で食事なんて、初めて」

地下鉄で移動すると言ったのに、美月がやっぱりタクシーに乗って行くと言い出した。

「それほど、有り難がるほど高級な店じゃないよ」

美月は、駅に向かおうとする私の袖を、クマのプーさんを引っ張ってくクリストファーロビンのように引っ張っぱる。

「うわーっ緊張するなあ。料亭なんて。それに、基樹さんまで一緒だなんて。そうとわかってたら、もっとめかしこんで来たのに」

「充分きれいだって」私は、美月に向かっていう。

「そんなこと言って就業時間が終わる前に、ロッカールームに駆け込んで化粧直しして、準備万端な癖に」

美月は、信じられないって顔で私を見る。