お勘定と言われて、兄が会計するために立ち上がった。

兄は、いい気分で、店から出てくると
「おい、麻結子、俺はこの娘送ってくから、お前は森谷に送ってもらえ」
と正直に言ってしまった。

森谷さんが、とうとう笑いを堪えきれずに声をあげて笑いだした。

「楽しそうだな。裕貴、後を頼むぞ」
そう森谷さんに言うと、兄は、パッチンと思いきり彼の背中を叩いた。

大きな音とともに、兄の高らかな笑い声が響いた。

「大丈夫ですか?」
背中が赤くなってそうだ。

「はい。このくらい平気ですよ」
森谷さんは兄の行為を当然だと思ってるみたいだ。

兄が、美月と並んで、タクシーをつかまえに、通りの方へ歩いて行ってしまった。

「いや、ちょっと待って」お兄ちゃん、一緒に帰ろうよ。
私は、兄を追いかけて行こうとした。

「麻結子さん」

行きかけたところで、話しかけられ、私は立ち止まった。

「はい」

「お兄さんに、こういう謀は向かないようですね。肝に命じておきましょう。それで、僕達のことは、お許しが出ましたよ」
森谷さんが私に向かって言う。

森谷さんは、私のすぐ前に立っていた。

「はい。えっと、でも、お疲れでしょうからこのまま解散の方が、よくないでしょうか?」

ご褒美のリラックスタイムはまだ、可能性がある。

私は、完璧なイケメンと二人でお酒を飲むよりも、早く家に帰って湯船に浸かりたいと思う女だ。

また、私は、あきらめてない。

もちろん、お風呂の方だけど。