嘘から始まる運命の恋
第一章 すべての始まり
 話の始まりは一昨日の金曜日だ。私はいつも通り特許事務所での事務仕事を終えて、真由里とふたりで暮らしている市内の2LDKのマンションに帰宅した。アパレルショップの販売員である真由里は、店のシフトが遅番だったり、友達と飲みに行ったりすることもあって、いつもは私より遅く帰って来る。でも、その日は珍しく真由里の姿がリビングにあった。驚くと同時に、イヤな予感を覚える。妹が私よりも早く帰ってくるのは、私に用事――だいたいは頼み事――があるときなのだ。

「お姉ちゃん、おかえり」
「あ、うん、ただいま」

 無理難題をふっかけられる前に自室に向かおうとしたけど、真由里が前に立ちはだかった。そして、いきなり顔の前で両手を合わせ、私を拝むようにして言う。

「お姉ちゃん、お願いがあるの!」

 私はため息をついた。

「はいはい、今度はなんのお願い? お金貸してほしいの? それともうちの事務所の独身男性を紹介してほしいの? あいにくこの前紹介した人くらいしか真由里の好みの男性はいないわよ」

 残っているのは既婚者かずいぶん年上か……と言いかけた私の言葉を遮り、真由里が言う。
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