choice 01
第三章 島

暗い…。

明るすぎる、白い光に包まれ…。

そして、暗い闇…。

光から闇へ…。

その激しい落差を感じることもなく、深く意識が墜ちる。

どの位の時が過ぎたのだろう…。

背中が冷たい…。

コンクリート?

シアタールームの床で無いのは確かだ。

すると声が聞こえる…。

「…君…、葵君…」

誰だ?

「葵君…、おい!しっかりしろ!葵君!」

必死に葵を呼び掛ける声がする。

呼び掛ける声に反応し、葵は少しづつ目蓋を開ける。

「歩…さん?」

葵を呼び掛けた。声の主は歩だった。

「良かった…。気がついたみたいだね、座って少し休んでて、気だるさが残ってるはずだから…」

歩の言うように、葵は体が少し重く感じた。

目を覚ました葵を確認すると、歩は有紀に声を掛ける。

「有紀、そっちはどうだ?」

有紀の方には倒れている愛美と容子、そして、その隣に座りこんでいる順平がいる。

有紀は歩に言った。
「二人共…共に呼吸、心音、脈拍は正常だ
。じきに目覚めるだろう」

有紀は順平に言った。
「順平…、恐らく二人共に大丈夫だか…一応目覚めるよう、呼び掛けてくれ」

「わかりました」
順平は気だるそうだ。順平も目覚めて間もないのがわかる。

有紀は順平に二人を託し、倒れている堂島夫婦の所へ向かった。

歩も別で倒れている船長の山村とその助手の椿の元へ向かう。

葵の元へ九条と美夢が寄ってきた。
どうやら九条と美夢も無事だったようだ。

「葵…、大丈夫?これ…一体どうゆう事?」

美夢も少しだるそうだ。

葵は立ち上がって言った。
「それをこれから考える…。少し辺りを見てくる」

「葵君…、危険だぞ!」

九条が葵を制止しようと言ったが、葵は言い返した。

「今のところは大丈夫でしょう…、危険ならば僕らは今頃とっくに危害を加えられてますよ」

そう言うと葵は行ってしまった。

九条は呆れた様子で美夢に聞いた。
「彼はいつもこうなのかい?」

美夢は申し訳なさそうに九条に謝った。
「すみません…後できっちり怒っておきます」

九条は苦笑いで言った。
「まぁ…彼の言う通り、僕らは全員気絶し てたわけだからね…、今の状況が危険なら、とっくに危害を加えられてるからね」

九条と美夢の元に歩が来た。

九条が歩に聞いた。
「どうだった?」

「皆は一応無事だ…、って、葵君は?」

「彼はもう行ったよ」

歩は美夢に聞こえないよう九条と会話する。
「やれやれだな…俺は葵君を追うよ。今のところ危険は無さそうだか、流石に一人で行動さす訳にいかないからな」

「皆にどう説明するんだ?」

「九条は船長にこの状況を確認してくれ…。まぁ、恐らく船長も分からないだろうが…」

「で、僕にどうしろと?」

「船長と口裏を合わせて、ここが目的地だと、うまいこと誤魔化してくれ…演説は得意だろ」

「演説は関係ないだろ…」

「皆が混乱するのはなるべく避けたい…
そうなると、リーダーシップがある船長とお前でこの場を納めてくれ」

九条は仕方ないといった表情で言った。
「了解した、じゃあ…葵君は頼んだぞ」

「ああ…、体調に異常があれば有紀に言え、あいつは信用して大丈夫だ」

そう言い残して、歩は葵を追った。


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