約束の小指、誓いの薬指。
この世界に疎くあれ
凛音の誕生日は一緒に迎えられたものの、その日は仕事が立て込んでいたため朝早くに出なければならなかった。


何度もお礼を言ってくれる凛音に見送られてマンションを後にする。


「言い残したことはない?」


「うん。行ってらっしゃい」


という会話を交わして。


言い残したことはないか、なんて偉そうだし仰々しく聞こえるが、別れ際のこのやりとりは僕たちの間では恒例となっている。
凛音とデートをするようになった時、人見知りであまり話さない凛音に対して、別れ際にこう言ったのがきっかけだった。
そしたら、楽しかったですとか、また遊びに行きたいですとか、あれだけ言葉をつまらせていた彼女が、何の戸惑いもなくそんな言葉を言ってくれるものだから、機嫌を良くした僕は今でも言い続けている。
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