イケメン王子先輩と私。
またか……。
【霰side】
俺が家に帰って自分の部屋で勉強をしているとドアが開いた。開けてきたのは兄貴達だった。
「霰。……ちょっといいか?」
「あぁ、いいけど。……なに?」
兄貴にリビングに連れていかれた俺は椅子に座った。
「この前の雫って子、……結局彼女なのか?」
「……あぁ、1年生のな。時雨兄さんと雹牙兄さんはいねぇの? 彼女」
「俺はこの通り、見た目が怖いって言われて彼女なんかいねぇよ。……兄貴は?」
「俺は……前はいたけど今はいねぇ」
「そうか……。俺、今回は前みたいに彼女を悲しませたくねぇ」
「だな。霰は彼女と“色々”あったもんな……。じゃあ俺達、部屋に戻るから。おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
そう言って俺達はそれぞれの部屋に戻った。愛美……。
それから1ヶ月が経ち、11月になった。掃除が終わった俺は帰ろうとした。すると、いきなり腕を掴まれて裏庭へと連れてこられた。ったく、3年でこういう事をする人といったら――……。
「――愛美、何の用だよ……」
「……ねぇ結くぅん、私達やっぱり――」
「あのなぁ、いい加減にしろよ。……俺は雫以外興味ねぇから。またな」
「――待って!!」
愛美はそう言って俺を後ろから抱きしめた。
「……なんだよ」
「じゃあ……じゃあ1回だけ私に……キスして?」
「……は? なんでお前にキスしなくちゃいけねぇんだよ」
「してくれたら私、結くんの事諦めるからぁ……」
「あのなぁ、俺は誰にでも優しい訳じゃねぇし」
「へぇー、じゃあ雫ちゃんがどんなに痛い目に遭ってもいいんだぁ〜……?」
!!コイツッ……、雫を使うなんて……!!
「……しょうがねぇな……。ほら、目ぇ閉じろ」
そう言って俺は愛美の方を向いてキスを軽くした。唇を離した後、愛美は俺の腰に腕をまわしてまたキスをしてきた。
「……っ!! 愛美っ……、1回だけだっていっただろ!?」
「だってぇ〜、結くんがかっこよかったんだもーん♪」
「お前なー……」
すると、近くの草むらがガサッと音を立てた。まさか、あの子猫……?そう思い、姿を現すのを待ってみると。
「……あっれぇ〜? 雫ちゃん〜? もしかして、見ちゃったのぉ〜??」
「あ……。ごめん、なさい……私……っ」
「! おい、待てよ雫!!」
雫は走って学校を出ていってしまった。俺は雫を追いかけようとしたが、愛美に引き止められた。
「大変な事になっちゃったねぇ〜、結くん♪」
「……チッ」
俺は思いっきり愛美を睨んで腕を振りほどき、雫の後を追った。……さすがにもういないよな。早く雫の誤解を解かなきゃな。