一夜くんとのアヤマチ。
#3:「僕のこと、どう思ってる?」
それからまた数週間過ぎたある日。

「じゃあ、行ってくるね。授業頼んだわよ?」
「はい!」

スーツを着て保健室を出る鴫城先輩の姿を、私は廊下と保健室の間から見送った。

「あと五分か…。そろそろ準備しないと」

あらかじめ先輩が用意してくれていた教科書や出席簿などをカゴに入れ、保健室を出る。

今日、鴫城先輩は養護教員の勉強会とやらに出席するため、午後からはいなくなる。そのため、午後から三年四組で受け持っている授業を、臨時で私がやることになったのだ。

授業の範囲とか、どんな感じで進めて行けばいいかとか、そういうのはだいたい先輩から聞いてはいる。だけど、授業なんて初めてで、それにクラスが三年四組ということもあって、私の心拍数は急上昇していた。

「えっと…あ、ここだ」

ドア付近の「三年四組」の文字を確認すると、私は荷物を近くの机に置いた。時計を見る。…あと三分。ちょっと早く来すぎたかな…。

「…一夜くんどこだろ?」

ふと気になり、教室の窓から中を覗く。さすが受験生、授業が始まる三分前ともなると一心に参考書に見入る。そして教卓のほぼ真横には、マジメに問題を解いている一夜くんがいた。

「キーン、コーン、カーン、コーン」

チャイムの音で、教室の皆は一斉に参考書を片付け、教科書を出す。…学生時代の私よりずっとマジメだ…。

「起立。礼」

私が入ると、皆は多少訝しげな顔をしながらも立ち上がり、礼をした。

いよいよ、私の授業が始まる。
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