一夜くんとのアヤマチ。

#7:「本当のこと、知っておいて」

「…」

とっさに目を閉じ、数秒後、私の体には何の変化もないことが感じられた。

「…クソっ…」

細い、それはそれは細い穴を通って来たような声だったが、確かにお父さんの声だった。

「…」

目を開ける。銃口から煙は出ていたが、私のすぐ左の床からも、銃弾が刺さったことにより煙が発生していた。

「…クソっ…！」

銃がお父さんの手元を離れる。そして、お父さんはその場に泣き崩れた。そして何度も何度も、叫び続けた。

…今まで何の親孝行もしてこなかったことを、今更ながら酷く後悔した。

近隣の人が通報したんだろう。約五分後、どこからともなくサイレンの音が聞こえた。

「先ほど銃声がこの辺りで聞こえたとの通報があったのですが…」
「…私です」

お父さんは一切抵抗する様子もなく、警察の人に連れられてパトカーに乗せられた。私達も私達で、事情聴取を受けることになったわけだが、それはまたいつか、別の機会に話すとしよう。

「…」

私達は再び実家に戻って来たのだが、そこは驚くほど空っぽで、何の息吹も感じられなかった。

「…ゴメン、日向…」
「…謝らなくていい」

今欲しいのは、謝罪なんかじゃなかった。

「日向ちゃん」
「…何ですか？」
「ちょっと、話したいことがあるの。…一夜、しばらく待っててくれる？」