白と黒のコーヒータイム

理解できない

「何がダメだっていうのよ。」

そんなことをぼやきながらコンビニのスイーツコーナーで気が済むまで甘いものを篭に入れ、極めつけにお酒コーナーで角ハイボールを掴む。

失恋したからといって一人で居酒屋に行く気はない。

恋愛にお金はかけても失恋にお金なんてかけたくないから、そんな意地で国見優子は愛用しているコンビニに来ていた。

何度か元カレとも利用したことがあるコンビニ、でもそんな理由で足を遠のかせたくない大切な自分のテリトリーだ。

負けたくない、負けたなんて思いたくない。

でも悔しい。

でも悲しい。

不安定な感情は涙を誘い、視界がゆらぐのが分かって懸命にこらえた。

ああ、やだな。

どんな状況でも客観的に自分を見れる国見は奥歯に力を入れた。

泣くのは家についてから。

こんなところで泣くなんてみっともないし、周りに好奇な目で見られたくもない。

みんな他人の非日常的なシーンには何故か興味を持ってしまうのだ。

「あーもう、帰ろ帰ろ。」

ついでに気晴らし用の雑誌も篭に入れてレジに突き出す。

コンビニで大量買いだなんて大人だなと自分に感心しつつ、重みのあるビニール袋を手に重い足取りで家路についた。

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